背が高かっ目に入
時はめぐり、澄川の名を継いだ基尋も伴侶を得、やがて一人息子をもうけた。息子は結婚後、病を得たが基尋にとってはれても痛くない孫を一人残した。
一粒種の名を、澄川東呉という。
「じいちゃん。寝たのか?最近、よく寝るよな~。」
「お話をたくさんされましたから……お疲れになったんですよ、東呉さま。」
「さあちゃん……。さあちゃんってば。」
いきなり目の前に誰かの顔が近づいて、禎克は我に返った。
「おっす。」
「おっす……おら、ごくう?」
見知らぬ顔に、驚いて周囲を見渡すと、ほら、この子が新しいお友達なんだよと、皆が口々に言う。
「あ……の、こんにちは。はじめまして。」
お行儀のよい禎克は椅子から立ち上がると、新しいお友達に丁寧にぺこりと頭を下げて挨拶をした。くるりとカーブした長い睫が揺れる。
新しいお友達が、思わず「やべ……かわぇぇ~」と、ごちた。
「なぁ。お前めっちゃ可愛いからさ、おれの嫁さんにしてやるよ。いいな。」
「お?……お嫁さん……?ええーーーーっ!!!!!」
周囲は大騒ぎになった……というより、爆笑の渦になった。
「さあちゃんをお嫁さんだって!」
「きゃあっ。さあちゃん、大変~。」
「知らないもの、仕方ないよ~。」
女の子たちの方が、大騒ぎしている。
「なんだよ。何がおかしいんだ、お前ら。つか、もう誰か付き合ってる奴いるのか?」
禎克は、ぶんぶんと頭を振った。
「もしもそんな奴がいるのなら、おれ、そいつと決闘する。」
「決闘だって~!もてもてさあちゃん!」
「あわあわ……。」
ひよこ組は大騒ぎになっていた。編入してきた男の子は柏木大二郎という時代がかった名前で、年長さんのクラスに入っても遜色ないほどた。禎克はちらりと相手の様子をうかがった。
喧嘩しても、絶対叶わない……気がする。でも……。お嫁さんは無いと思うので、思い切って勇気を振り絞った。
「ぼく、女の子じゃないよぅ……。」
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